
中国企業はどのようにDifyを活用しているのか?調べてみたら本格的だった
コラム
2026/04/16
OSS版があり、ほぼすべての生成AIモデルが使用可能なのに加え、直感的にAIアプリやエージェントを開発できるUIと充実した日本語サポートなどが評価され、Difyは日本で急速に導入が進んでいて、活用事例も数多く紹介されています。ざっと調べただけでもこれだけ紹介されています。
【リコーのAI市民開発が本格化、ノーコード生成AIツール「Dify」の社内実践と展開】
https://jp.ricoh.com/news/stories/articles/ai-citizen-development-dify
【ライオンが業務の「やり過ぎ」解消、Dify活用のAIエージェント開発者を100人育成へ】
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/03368/101000003/
【長谷工コーポレーション 生成AIで施工管理者の危険予測を支援】
https://www.haseko.co.jp/hc/information/press/20250909_1.html
【神戸市がDifyで進める「AIアプリ内製化」への第一歩】
https://smartkobe-portal.com/web/smartcity/1960403359/
【Difyで変わるサイバーエージェントの働き方】
https://www.cyberagent.co.jp/way/list/detail/id=32284
【市民と職員に向けAIエージェント提供 町田市が「Dify」を使って開発】
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nc/18/020800017/021201394/
さて、ここからがこのブログの本編です。日本企業や団体のDify事例は数多く紹介されていますが、海外企業の事例はそうでもありません。Dify開発元のLangGenius社によると、Difyのユーザー数の国別ランキングは1位が中国、2位が日本、3位がアメリカとのこと。ということでユーザー数1位の中国の状況を調べてみました。Difyを活用している中国企業は、金融、製造、小売、通信など多岐にわたる業界で広がりを見せているようです。以下に代表的な企業とその活用事例を紹介します。
順豐速運(SFエクスプレス)

中国民間物流企業の中で最大級の、中国版クロネコヤマトともいえる、宅配便のシェアが高い企業です。従業員数は20万名近く、年商は約6兆円と、ヤマト運輸の4倍の規模で、世界第4位の物流企業です。同社はDifyとLangGraphを連携させたAIエージェントを様々な業務で活用しています。
AI責任者のLiu Ziheng氏(劉子恒氏)は2025年7月に深圳で開催されたData+AI Conferenceにて、同社のAIエージェント戦略について以下のように述べています。
先ず、どのレベルの自動化なのかという点については、“AIエージェント活用による業務自動化レベルは、シナリオの複雑さとデータの完全性によって異なります。明確でデータが豊富なタスク、例えば設備リソース調整などは高度に自動化できますが、探索的または戦略的な計画には依然として人の介入が必要です。”と語っており、すべてを自動化するのではなく、ハルシネーションなどのリスクやモデルには学習できないファクターが存在する領域では人が最終的な判断を下しているようです。
また、AIエージェントの適用領域に関する考え方としては、“汎用的なAIエージェントによるサービスを目指すのではなく、特定の業務課題に焦点を当てる方が、より実用的な結果が得られる。例えば、航空貨物の定時発送率の向上などです。”と語っています。
開発の進め方については、“初期にはAIエージェントが使うデータの整備とナレッジベースの構築に注力し、ビジネスワークフローと統合することでモデルに意思決定プロセスを学習させた。”と語っています。
日本企業のDify活用事例が主にバックオフィスや営業関連に集中しているのに対して、SFエクスプレス社は基幹業務でも活用していることが分かります。
JD.com(京東商城/ジンドン)

中国でアリババのTmallに次ぐシェア2番手のB2Cコマース企業です。JD.com社はDifyを活用して高並行処理能力を備えたインテリジェントな顧客サービスシステムを運用しています。
従来のルールエンジンに基づくシステムでは複雑なビジネスロジックを含む毎日寄せられる100万件以上の問い合わせを自動で処理するのは困難でした。そこで複数の生成AIモデルとルールエンジンを組み合わせた階層化戦略を採用し、そのオーケストレーションをDifyに担わしています。
基本となる層では汎用的な生成AIモデルを使用して定型的な質問と回答を処理し、ビジネス層ではファインチューンされた高性能ローカルモデルを使用して注文やアフターサービスを処理し、緊急層ではルールエンジンを使用して支払いや納品異常を処理するという3層構造を構築しています。
さらに、さまざまな種類のユーザー要求に対応するために生成AIモデルを動的に選択し、よくある質問への回答をキャッシュすることで、モデル呼び出しの頻度を削減しています。結果としてシステム応答時間は3.2秒から1.1秒に短縮され、問題解決率は42%向上し、人件費が35%削減されたとのことです。
この2社の事例以外にも社名は不明ですが、某自動車部品メーカーが製品の品質検査システムをDifyで開発している事例があります。
毎日何百万枚もの製品を検査する必要のある同社は、エッジコンピューティングとクラウドを連携させ生成AIを活用した2段階の品質検査ソリューションをDifyで開発して運用しています。
初期の欠陥スクリーニングは、レイテンシを極限まで短縮させるために軽量の生成AIモデルQwen3をエッジノードに搭載しローカルで処理するように設計して数をこなし、怪しい製品を抽出します。次に、Alibabaクラウド上に構築された高性能モデルを使ったソリューションで疑わしいサンプルを再検査するというフローです。システムの単一トランザクション処理遅延は80ms以内に抑えられており、不正検出精度は99.2%に達しているとのことです。
今回紹介した中国企業のDify活用事例は日本企業も参考にするところが大きいと思われます。

